公開日:2024年5月7日最終更新日: 2024年9月2日
ビジネスの現場でデータ分析やAIサービスが普及し、画像や動画など非定型のデータを扱う機会が多くなりました。このようなビッグデータを扱う場合は、大容量のストレージに加えて高性能なコンピュータリソースが必要とされるため、総合的なコストを考えると導入のハードルが高いでしょう。
そういった中で、データ保管に特化したクラウドストレージが多く提供されており、活用されています。Azure Blob Storageは大容量データをクラウド上で管理できるプラットフォームで、用途に応じて適切な性能を発揮できるAzureのストレージサービスです。
本記事ではAzure Blob Storageの仕組みや用途を解説し、適切なコストを選定できるように性能ごとの利用料金も紹介しています。
目次 <Contents>
Azure Blob Storageとは

Azure Blob Storageは、画像や動画などサイズの大きなファイルの管理に適したクラウドストレージサービスです。BLOBとは大きなバイナリデータのことで、メディアファイルに限らずバックアップやアーカイブ、仮想ディスクなども含まれます。BLOBを自由に出し入れできる大容量で高パフォーマンスのストレージとともに、データ管理プラットフォームが提供されます。
WebアプリケーションのCDNとして利用したり、バックアップ先として利用したりと様々な用途での活用が可能です。保存したファイルにはそれぞれエンドポイントが割り当てられ、HTTP/HTTPS経由での読み書きできます。さらに細やかなアクセス制御も可能で、不特定からのアクセスを許可したり、Entra IDとの連携による強固なセキュリティを確保したりと、自由にカスタマイズ可能です。
またストレージの可用性が高く、リージョンごとのデータレプリケーションやスナップショット取得にも対応しています。なお、アクセス頻度やレプリケーション態勢などサービス内容に応じて利用料金が決まっているので、用途に適したストレージを選ぶとよいでしょう。
Azure Blob Storageの仕組みと料金体系
Azure Blob Storageで読み書きするデータは、ストレージアカウントと呼ばれる領域内で管理されます。ストレージアカウントは用途ごとに作成する必要がありますが、性能に応じて料金体系が異なるので詳しく紹介していきます。
ストレージアカウント
ストレージアカウントは、Azure Blob Storageの管理単位であり、データを保存するための大きな器にあたる要素です。ストレージアカウントには下記のような種類が提供されており、Premiumは特に高パフォーマンスで低遅延の用途に向いているストレージです。
- Standard汎用v2
- 低コストながら汎用的に利用できます。
- PremiumブロックBLOB
- 小さなデータを高頻度でアクセスするような用途に向いています。
- PremiumページBLOB
- サイズの大きなファイルを扱う、あるいはデータ追加が多い用途に向いています。
また、ストレージの利用料金はデータを読み書きするためのアクセスコストと、データを保管するためのストレージコストに大きく分けられ、これらは下記のアクセス層によって変動します。
- ホット
- ストレージコストが高く、アクセスコストが安いので、高頻度のデータ利用向き。
- クール
- ホットよりもストレージコストは安い反面、アクセスコストが高くなる。
- コールド
- クールよりもストレージコストが安い反面、アクセスコストが高くなる。アクセス頻度は低いが、アクセス性能を落としたくないケースに向いている。
- アーカイブ
- コールドのようなアクセス性能を必要としないデータ保管の用途に向いている。
このように、データ管理の用途に応じてストレージアカウントやアクセス層を選ぶことで、無駄なコストを削減できます。
ストレージの冗長性
ストレージアカウントに保管されたデータは自動的にレプリケートされます。レプリケーションには下記のバリエーションが用意されており、メインとなるプライマリリージョンと、別の拠点であるセカンダリリージョンへの同期が可能です。
- ローカル冗長(LRS)
- プライマリリージョン内の3ヵ所で同期
- ゾーン冗長(ZRS)
- プライマリリージョン内の可用性ゾーンの3ヵ所で同期
- geo冗長(GRS)
- プライマリリージョンとセカンダリリージョンの両方の各3ヵ所に同期。プライマリリージョンとセカンダリリージョン間は非同期的にコピーされる。
- geoゾーン冗長(GZRS)
- プライマリリージョンはZRSの同期、セカンダリリージョンではLRSの同期が取られる。
BLOBへのアクセス方法
ストレージアカウントに保管されたBLOBはWeb APIやSDKを通じてアクセスでき、追加や変更、削除もサポートされています。Webサイト内からリンク経由での利用や、アプリケーションからエンドポイントを通してのアクセスが可能です。
ストレージアカウント内は、最小単位のBLOBデータと、ディレクトリに相当するコンテナで構成されます。例えば、BLOBにアクセスするためのエンドポイントは下記のような形式で表されます。
https://myaccount.blob.core.windows.net/mycontainer/myblob
- myaccount:ストレージアカウント名
- mycontainer:コンテナ名
- myblob:ファイル名
利用料金
Azure Blob Storageの利用料金は、ストレージアカウントとのデータ転送量、アクセス回数、アクセス層に応じて決定されます。
例えば、 Standard汎用v2のストレージアカウントでは、ストレージのデータ使用量に応じて下記の月額料金がかかります。
冗長性 | ホット | クール | コールド | アーカイブ |
---|---|---|---|---|
LRS | 3.0318円 | 1.66744円 | 0.68214円 | 0.30318円 |
ZRS | 3.7897円 | 2.09188円 | 0.75793円 | ー |
GRS | 6.0635円 | 3.33488円 | 1.36427円 | 0.60635円 |
GZRS | 6.8214円 | 3.75931円 | 1.44006円 | ー |
また、ストレージアカウント内のデータ操作にかかる料金は下記の通りです。
冗長性 | ホット | クール | コールド | アーカイブ |
---|---|---|---|---|
LRS | 書込:7.5793円 読込:0.6064円 | 書込:15.1586円 読込:1.5159円 | 書込:27.2854円 読込:15.1586円 | 書込:17.3111円 読込:833.7176円 |
ZRS | 書込:9.4741円 読込:0.6064円 | 書込:15.1586円 読込:1.5159円 | ー | ー |
GRS | 書込:9.4741円 読込:0.6064円 | 書込:15.1586円 読込:1.5159円 | 書込:54.5707円 読込:15.1586円 | 書込:40.8067円 読込:833.7176円 |
GZRS | 書込:28.7709円 読込:0.7580円 | 書込:51.2358円 読込:1.9707円 | 書込:74.8830円 読込:19.7061円 | ー |
※ストレージアカウントのデータ使用量が50TB/月に到達するまでの料金です。
※料金は東日本リージョンで1ドル151.585円で算出しています。
利用料金は以下のような傾向があるので、アクセス頻度やデータ使用量のバランスを考慮してアクセス層を選びましょう。
- ストレージコスト:ホット > クール > コールド > アーカイブ
- アクセスコスト:ホット < クール < アーカイブ < コールド
Azure Blob Storageの用途
Azure Blob Storageでは高パフォーマンスのストレージが利用できるため、低遅延で高速なアクセスが要求されるリアルタイム処理の用途で活用できます。そのほか、大量のデータを扱うデータ分析やバックアップの保存先としても利用可能です。
- 不特定ユーザからのアクセスが想定される動画ストリーミング
- アプリケーションを通じて複数ユーザがリアルタイムに編集するデータ
- 機械学習やデータ分析のためのデータ処理パイプライン
- バックアップデータの長期保管
Azure Blob Storageの使い方
Azure Blob Storageのチュートリアルとして、画像ファイルのエンドポイントを作成する方法を紹介していきます。
BLOBのアップロードとアクセス管理
Azure Blob Storageを利用するには、まずストレージアカウントを作成する必要があります。
ストレージアカウントの作成
Azureポータルにログインし、サービス一覧を表示しましょう。「ストレージ」カテゴリを選び、ストレージアカウントをクリックします。

ストレージアカウントの画面で「+作成」を選ぶと、作成画面が表示されます。

作成画面では下記のような項目を入力しながら進めて、ストレージアカウントを作成しましょう。

- 基本タブ
- リソースグループ
- ストレージアカウント名:エンドポイントのホスト名に相当
- 冗長性:LRS、ZRSなど
- 詳細タブ
- アクセス層:ホット、クールなど
コンテナの作成
続いて、ファイルの保存先となるコンテナを作成しましょう。まずは作成したストレージアカウントを選択します。

左メニューから「コンテナ」を選び、「+コンテナ」をクリックしましょう。画面右側に入力フォームが表示されるので、コンテナ名を入力して「作成」をクリックします。

ファイルアップロード
作成したコンテナの画面を開き、「アップロード」をクリックしましょう。


作成画面が開いたら、ローカルにあるファイルをドラッグアンドロップするか、「ファイルの参照」からファイルをセットします。

ファイルをセットできたら「アップロード」ボタンをクリックすれば、BLOBのアップロード完了です。
BLOBのダウンロード
ファイルを保存できたら、エンドポイントから画像ファイルにアクセスしてみましょう。今回作成したエンドポイントは下記になります。
https://ストレージアカウント名.blob.core.windows.net/sample-blob/pink.jpg
ただしアクセス許可がないため、そのままアクセスしても下記のようにエラーが表示されます。

そこで、Azureポータルに戻ってアクセスできるように設定しましょう。ここではURLを複雑化して時間制限を設けることで、誰にでもアクセスできないように変更してみます。コンテナの画面に移り、「SASの生成」をクリックします。

作成画面が開くので、下記のように開始と有効期限の日時を入力し、「SASトークンおよびURLを生成」をクリックしましょう。

生成された「BLOB SASトークン」をパラメータとしてエンドポイントに付加して、再度アクセスしてみましょう。

URLの有効期間内であれば、画像が表示されるのが確認できます。
まとめ
Azure Blob Storageは大容量データを管理できる高性能なストレージを提供するプラットフォームです。リアルタイムのアクセス向けのアプリケーションや、アクセス頻度の低いバックアップ保存など活用場面は多岐にわたります。ストレージ性能や冗長化など要件に応じた料金体系が用意されており、月々のコストを最適化できるメリットがあります。
クラウド上のデータ管理で懸念されるセキュリティや可用性も確保できるので、既存のストレージからの移行を検討してみましょう。